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Vol.27 「ケースでわかる株式評価の実務」の出版について

株式価値あるいは企業価値は、一般的な用語であり、ある意味で身近なものでもあります。また公開企業の株価情報は溢れるばかりであるし、株式投資を行っている人も数多くいます。
しかし、日本においては、株式の価値あるいは企業の価値の評価に関する実務は意外なほど発展してこなかったという問題意識より、【ケースでわかる株式評価の実務】を中央経済社より出版しました。内容は
以下の通りです。

第1章 株式等評価の基礎的条件

1 評価が必要な場面
2 評価の前提
3 評価額の類型
4 評価実務の基準

第2章 業界分析の手法と対象会社の強み・弱みの分析

1 外部情報の収集と分析
2 内部情報の収集と分析
3 分析フレームワーク

第3章 株式評価のための財務分析の方法

1 正常化収益の計算
2 レシオ分析
3 株式評価のための財務指標

第4章 株式評価の手法

1 株式評価の手法
2 アセット・アプローチ
3 インカム・アプローチ
4 マーケット・アプローチ
5 その他の評価手法
6 総合評価

第5章 割引率の算定

1 基本的な考え方
2 株主資本コストの推定
3 有利子負債コストの推定
4 WACCの計算

第6章 プレミアムとディスカウント

1 非公開会社特有の論点
2 コントロール・プレミアム/マイノリティ・ディスカウント
3 非流動性ディスカウント
4 「コントロール・プレミアム/マイノリティ・ディスカウント」と「非流動性ディスカウント」の関係
5 企業価値の各評価方法と「コントロール・プレミアム/マイノリティ・ディスカウント」の関係
6 その他のディスカウント

第7章 税法における非公開株式の評価とその問題点

1 税法における評価の必要性と特徴
2 他の目的における税法上の評価方法の利用
3 各税法における評価方法の概略
4 相続税における非公開株式の評価方法
5 法人税における非公開株式の評価方法
6 所得税における非公開株式の評価方法
7 税務上の評価方法の他の目的の評価への利用とその問題点

第8章 会社法における株式の評価

1 はじめに
2 全部取得条項に基づく取得に係わる株主総会決議について反対株主による価格決定の申立て
3 (種類株式発行の定款変更時、株式の併合また分割時、株式無償割当て時、単元株式数についての定款変更時等)反対株主の株式買取請求
4 (組織再編等における)反対株主の株式買取請求
5 譲渡制限株式の譲渡時における株式会社または指定買取人による買取りの際の売買価格の決定
6 相続人に対する売渡請求

第9章 実際の株式価値の決定

1 TOBにおける価格決定
2 合併、株式交換、株式移転における企業評価
3 IPO(新規株式公開)における価格決定

第10章 株式評価のケース・スタディ

1 持株会社傘下の子会社の評価(市場価値法の利用)
2 少数株主持分の評価
3 株式交換で非公開会社を100%子会社にするケース
4 合併比率の算定
5 ディスカウントTOB
6 投資価値の評価(シナジー)
7 DESにおける貸付債権の評価
8 転換請求権が付与された優先株式の評価
9 相続税法における種類株式の評価
10 新株予約権(ストック・オプション)発行に伴う評価
11 経営不振企業の評価(実態貸借対照表の作成など)

参考 Accredited in Business Valuation (ABV)について

とくに、従来の書籍では十分な説明が行われていなかった、ディスカウント・レートの設定や、非流動性のディスカウントあるいはコントロール・非コントロールのプレミアム、ディスカウントを詳しく解説しています。また、M&A の実務において重要なテーマであるTOB プレミアムの分析、あるいは会社法における株式買取請求事件における評価などを解説し、日本の実状に合わせて株式価値評価あるいは企業価値評価を体系的に見直してみようという試みが本書の企画となっています。

株式価値あるいは企業価値の評価は、個別具体的なケースにおいてのみ有効であり、万能の評価というものはありえません。例えば、A 社の株式を評価する場合には、評価の目的が何か(M&A か、買取請求であるのか、相続税の評価であるのか等)、評価の対象が1株であるのか、33.3%であるのか、100%であるのか、想定されている売却の相手が誰であるのか、継続企業の前提で評価するのか等を決めないと評価することはできないのです。したがって、本書では、評価に関する一般論を展開した後に、M&A、税法、会社法等における評価の理論と手法を解説し、具体的なケースにおける計算および留意点を示すことで、株式等の評価実務の参考として利用されることを目的としています。幸いにして、日本の非公開企業M&Aの草分けであるストライク社の荒井邦彦氏をはじめとするM&Aの実務家、かすが総合法律事務所の大村 健弁護士、ビバルコ・ジャパンのスタッフ等の協力を得て、実際の実務に基づいた解説書ができたのではないかと考えています。

本書は、企業価値評価に関心のある企業経営者、財務・経理担当者、公認会計士、税理士、弁護士等の専門家などを読者に想定していますが、企業価値評価に興味を持つ教育者、学生等にも有益な内容を含んでいると考えています。

以 上
(文責 小林 憲司)